Si(111)表面におけるAu原子の拡散と表面再構成 Si(111)表面は830℃以下で1×1から7×7構造へ相転移する。この7×7構造の表面を拡散するAu原子について走査型トンネル顕微鏡(STM)観察を行った。Si-Auの状態図によるとSi側にも、Au側にも個溶度はない。Si-Au系の共晶温度は370℃である。また、Si中のAu原子は高速拡散することが知られている。 Si単結晶試料(7×1×0.3mm^3)の長手方向の端面近くを片側だけ0.05mmφの金線で2回巻き付け、拡散試料とした。この試料をSTMのトリ-トメントチャンバー(真空度1.6×10^<-6>Pa)に入れ、650℃、15h通電加熱した。この熱処理で金線は溶解し、Au原子は試料の他端(金線の巻いていない方向)に向かって広がった。この試料に対して1200℃、10sのフラッシングを3回行った。Auのrichな領域からpoorな領域へ向けて、始めて連続的にSTM観察することができた。 Si(111)表面がAu原子で覆われる割合(被覆率θ)に従って、θの大きい方から順番にAu原子の表面配列(再構成)は6×6、√3×√3、5×2と移り、最後にAu原子の全くないSi(111)7×7が観察された。 バルクの場合と異なり、Au原子は表面再構成のドメインウォール(Au濃度がドメイン内に比べて大きい)や表面再構成構造に由来する原子溝に沿ってAuのrichな領域からpoorな領域へ拡散することが分かった。
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