先に我々はp-キシロキノン(PXQ)を原料とした炭素質薄膜とn-型シリコン(n-Si)との積層体(C/n-Si)が整流作用を有し、さらに太陽電池特性を発現することを見い出した。しかしながら、その再現性・調製条件の最適化に問題点があった。また、PXQのみでしか、この太陽電池特性は発現できていないことから、他の原料種での太陽電池特性発現の可能性、さらなる特性の向上、炭素質薄膜自身の物性制御の可能性等検討課題が残っていた。また、セル構成の改良点も多くあり、これらを通して安定的に高い変換効率を有する太陽電池の作製に興味がもたれる。 そこで本研究では、炭素質薄膜の構造・物性の把握、さらに物性制御の可能性を追及するとともに、C/n-Si積層体の太陽電池特性の高効率化を目的とし、含酸素官能基を有する4種の芳香族化合物を原料とした熱CVD法により生成する薄膜の生成過程と得られる炭素質薄膜の電子物性(ここでは電気伝導度)についてその調製条件等の影響を検討し、その最適化を行った。その結果、ピロメリット酸二無水物(PMDA)が最も低温(500℃以下)から導電性の薄膜を生成し、官能基構造・芳香族構造それぞれが反応性に大きく影響していることがわかった。また、薄膜の電気伝導率は膜厚とは直接関係なく成長速度に大きく影響され、速度が遅いほど高伝導性の薄膜を生成した。また、PMDA系薄膜とn-Si積層体について光電素子としての可能性を調べた結果、太陽電池特性を示し、さらに調製条件の最適化を行うことで最高変換効率6.5%で、ほぼ安定的に5%を超える調製条件が確立された。本積層体の接合はショットキー接合に近いヘテロ接合であることが示された。
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