ソフトウェア発展とは、ソフトウェアがその仕様の変更や仕様環境の変化に対応して、その機能や構造を変化、発展させ、それらの変更や変化を許容できることであり、仕様とプログラムの関係を適切に捉える理論を構築することが非常に重要である。本研究では、第一に、等価変換パラダイムに基づいて、仕様とプログラムの新しい関係を提案した。すなわち、(1)仕様を等価変換して、(計算に向いた)新しい仕様を得る。(2)その仕様を等価変換するルール群と制御記述を得る。ルール群と制御記述の組がプログラムである。 本研究では、この枠組のもとで、(a)新しいデータ構造を導入するための理論を与えた。また、(b)仕様から等価変換するルールを生成する基礎理論を作り実験システムを構築した。(a)はいままであまり研究されていないタイプの変換である。しかし、効率的なプログラムを作成する上で、データ構造の改善は非常に重要な役割をはたす。データ構造の改善のできない枠組では、多くの現実の問題に関して、十分効率的に解くプログラムをつくることが困難である。(b)は、パターンで指定されたアトムに対して適用可能な等価変換ルールを仕様から生成する。これは、従来のunfold/fold変換を用いたプログラム変換の技術を包含する。本研究は、効率的なプログラムを構築するための汎用の枠組を与えるとともに、ソフトウェア発展の理論の基礎を与えると期待される。
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