研究概要 |
発展パターンの同定および発展支援の基礎を得るための意味情報解析には、次のようなステージが必要である. (1)分析,設計仕様レベル(上流)の意味情報の水平的組合せ集合に対する解析.(2)プログラムレベル(下流)の意味情報の水平的組合せ集合に対する解析.(3)意味情報の垂直的組合せ集合に対する解析.今年度は(1)について研究を進め,一部(2)にも着手している. 仕様レベルのプロダクトとして取り上げたのは,データフロー/制御フロー図(DCFD)と状態遷移図(STD)である.これらをともにソフトウェアクォークモデル(SQM)に変換すると,両者の意味的な合成が可能になる.さらに合成された仕様を解析,変換すると,イベントの生成やデータの変化といった仕様を保ったまま,最小の意味粒子構成による仕様記述を得ることができる.冗長性の全くないこの記述は,その後の仕様レベルでの発展や,またプログラムとの対応をとる上での正準的なプロダクトとして優れている. 正準化の操作として,複数の関数に起動されるイベントに対する操作,起動されないファンクションの削除,等価効果をもつファンクションの簡約,イベント-ファンクション連鎖の簡約,等価データ(参照されうる値の変化が常に同期)の簡約,以上五つの互いに独立な操作を見い出した.正準化されたSQM仕様は,データ設定の追加定義,アクション設計(詳細化),データ型解析によって,プログラムに歩み寄るための設計推進が可能となる.また,正準化仕様に対するイベント/データ逆トレース(逆時間仮想実行)によるデータ設定/参照の順序解析が,障害保守および「発展の芽」の発見に有望な手段であることも明らかにしている.
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