研究概要 |
KEKのBファクトリーは,平成11年6月以来順調に運転を続け,その結果,我々は平成13年7月までに約3,100万個のB中間子・反B中間子ペアのデータの収集に成功した.そして,我々が建設しオペレートした半導体検出器からのデータを解析し,B中間子崩壊の時間発展を測定した.この測定から,B中間子系におけるCP非保存を発見することについに成功した.CP対称性の破れのパラメータsin2φ_1の値を0.99±0.15と決定した.この結果は,弱い相互作用の粒子・反粒子非対称性が小林・益川理論で説明されることを強く支持する.過去約40年にわたって続けられてきた弱い相互作用の粒子・反粒子非対称の起源の探究に解答が得られたと言ってよく,今回の発見の素粒子物理学における意義は非常に大きい.我々は,また,チャーム中間子とB中間子の寿命の精密測定も完了させ論文を完成させた.どちらの測定精度も現在,世界最高である.これらの結果は,当研究室の3名の博士論文としてもまとめられた.これらの解析には,当補助金により増強したマルチCPU-PCサーバがフルに使われた.当研究のもう一つの目標である第2世代半導体検出器の開発については,そのR&D事項をすべて完了し,その結果(放射線耐性の高い読み出しICの開発や短小ストリップを用いた擬ピクセル検出器)を論文として公表した.この開発結果に基づき,実験の設計が終了,実機の建設が始まっている.
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