B中間子の崩壊で、終状態にチャームクォークを含まない過程の崩壊過程の振幅は、ツリーレベルの振幅に加えて、1ループのいわゆるペンギンダイアグラムが大きな寄与を与えるが、これまで、B中間子の崩壊でのペンギン振幅におけるファクトリゼーションの仮定の妥当性などはあまり議論されてこなかった。 また、ここでのペンギン振幅は、主に、チャーム-反チャームの2体の中間状態を経由してチャームを含まない終状態に遷移するするB中間子の崩壊振幅であり、そのために終状態相互作用によるハドロニックな強い相互作用のフェーズを含んでいる。CPのダイレクト破れの大きさの評価にはこのような強い相互作用のフェーズの見積もりが必要である。これまで用いられてきたクォークレベルの計算では、強い相互作用のフェーズはチャーム-反チャームの2体の中間状態の不変質量の関数として得られている。しかしながら、実際の中間子レベルの崩壊が、チャーム-反チャームの状態のどのくらいの不変質量に対応しているのかが明確ではなく、CPのダイレクト破れの大きさの評価には、この値としてなにを採用するかという非常に大きな理論的不定性が存在する。 そこで本研究では、特にρ-ω混合によるCPのダイレクト破れについて、ファクトリゼーションの仮定や強い相互作用のフェーズの評価の不定性による影響を詳細に議論した。
|