KEK Bファクトリーなど、近年の高輝度衝突型加速器は多くのバンチを貯蔵することにより輝度をかせぐ。このためビームの交差時間間隔が短くなり、衝突反応がどの交差で生じたかをデータ読み出しの早い段階で同定するのは容易でなくなる。 この研究ではBファクトリーの実験条件のもとで、初段トリガーのデータからどの程度の時間精度で事象の起こったバンチの判定が可能であるかどうかを検討し、それを抽出するに必要な回路開発を行った。 時間情報の抽出には、ドイツDESY研究所における電子・陽子散乱実験ZEUS用に開発されたTDC回路を利用し、2ナノ秒間隔のパイプライン方式による時間計測が可能であることを確認した。逆にディジタル化した時間情報を再びタイミングシグナルに変換する回路も試作し、100ピコ秒以下のばらつきで安定に動作することを確認した。この結果より、各測定器のデータの時間情報を、一旦ディジタル情報に変換して演算処理を行うことで、最適なタイミングシグナルを作り出すシステムが、比較的簡易に構築できることを示すことができた。開発した一部の回路は、BELLEのトリガー回路のタイミングパルス生成回路に応用されることになった。
|