函館はイカの町として全国的に有名である。ところが、最近深刻な問題がもちあがっている。それはイカを加工すると必ず生じるイカゴロ(イカの内臓)の問題である。当地のイカ加工食品の原料は、前浜漁獲と遠洋イカに加えて輸入製品があり、加工に至る経路は非常に複雑である。 本研究では、イカの生産から消費に至るフローを調査しイカの動脈系(イカ製品)と静脈系(イカ残滓)の問題を明らかにし、また、現状でのイカ残滓有効利用技術に関する調査を行うとともに、今後開発しなければならない要素的技術の考え方を提案し、この分野のゼロエミッション化を推進することを目的とした。 計画は、 1年目:函館地域においてイカの流通経路を明らかにするとともに、函館地域のイカ残滓処理の実態調査を行い問題点の抽出やその新しい利用可能性について調べる。 2年目:イカ残滓有効利用技術の現状把握に加えて未来型技術の考え方、ならびに具体的アイデアを提案する。そして実現可能なものから具体化を進める。 3年目:モデリングならびにシミュレーションを行いトータル・デザインの分析・検討を行う。 4年目:関連領域の技術者集団の組織化ならびに検討会を開催するとともに、イカ残滓の資源化(ゼロエミッション化)技術に関するマスター・プランの提案を行うものである。 今年度は、実態把握のための聞き取り調査を中心に、パソコンやビデオ機器を使って情報収集を行った。具体的には、生産者(遠洋、近海、沿岸イカ釣漁業)、市場流通業者(卸売業、仲卸業、買出人、買受人)市場外流通業者(大手水産会社、商社)、小売業者、スーパー、加工業者、冷蔵業者等について個別にヒヤリングを実施し、函館におけるイカの生産から消費に至る動脈系のフローに関する資料を得ることができたので、それをもとにしたフロー・モデルを完成させた。今年度の成果は、文部省科研費・重点領域研究「ゼロエミッションをめざした物質循環プロセスの構築」平成9年度最終報告会要旨集に掲載するとともに、インターネットのホームページを開設し、すべての情報を掲載した。
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