研究概要 |
日本酒製造は全国で約2000社の業界であり,その販売量の半分強を灘や伏見などの上位50社の大企業が占める。したがって,全国すべて47都道府県にある蔵元のほとんどは中小企業である。各蔵元から様々な銘柄の日本酒が出荷されているが,製造プロセスを考えた場合,日本酒製造は比較的画一的なフローであり,物質の出入りを把握しやすいと考えられる。そこで本研究では,日本酒の製造および消費の集積度が高い米どころ酒どころ新潟県において,酒造プロセスにおける物質のインプットおよびアウトプットのデータベース化を行うとともに,そこでのエミッション発生について,原料および副産物の性状や嗜好品生産特有の事由などの構造的側面を整理して,物質循環の促進に向けた検討課題の抽出を行った。 アンケートと聞き取りによる物質フローと原単位の分析の結果、製造工程から排出される物質は,製品の清酒のほか,副産物の酒粕と米糠,廃棄物の汚泥,ガラス屑,プラスチック屑,紙屑,そして排水であった。特に,一升壜の洗浄や機器洗浄に用いる洗浄水の使用量は膨大である。一升壜の洗浄水や米糠・酒粕については蔵元によって状況が大きく異なり,一升壜リサイクルを進めるほど,端麗な酒造りを求めるほど発生原単位は大きくなるといった難しい面もある。米糠・酒粕は現段階では商業ベースで取引きされているが,将来的な不安も残されている。ゼロエミッション化への取り組みに関しては,原材料投入段階での発生抑制として,低脂肪・低タンパクの酒米の品種改良を進める試みがある。プロセス内でのリサイクルとして,一升壜や機器洗浄水の再利用が期待される。規模の小さい蔵元では産業廃棄物が自治体ステーションへ排出される場合もあり,産廃業者等の既存のリサイクルルートの活用が期待される。
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