研究課題/領域番号 |
09248101
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
小倉 紀雄 東京農工大学, 農学部, 教授 (30015127)
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研究分担者 |
山下 信義 資源環境技術総合研究所, 主任研究官
加藤 義久 東海大学, 海洋学部, 助教授 (00152752)
柳 哲雄 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (70036490)
高田 秀重 東京農工大学, 農学部, 助教授 (70187970)
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キーワード | ポリ塩化ビフェニル / PCB / 堆積物 / 東京湾 / アルキルベンゼン / セシウム / 堆積物 / 数値モデル |
研究概要 |
昨年度までの研究から流入河川の河床や河口域や湾岸の運河に過去に排出されたPCBが堆積しており、それらが堆積粒子の再懸濁に伴い水中に回帰したり、沖へ向かって再移動される可能性が示唆された。 そこで今年度は、まず、堆積粒子の再移動に関する情報を得るために、1960年代に大気中核実験により大気へ放出されていたセシウム-137の分析を行った。セシウム-137の大気からの降下量は1963年に大気中核実験が禁止された後急減し1970年代後半には最大値の1%以下になっているのに対して、東京柱状堆積物中では33cm付近に極大をもつものの、表面へ向けて減少は非常に緩慢で変動もみられた。この分布は、粒子状で河川およびその流域に負荷された物質は河床に堆積し、増水時の再懸濁により河口、内湾へと再移動を繰り返して輸送されるため、20年以上前に流域への負荷の止まった物質も河川、河口堆積物に一時的に保存されそれが内湾への長期的な供給源となっていると結論づけられた。以上の推定をふまえ、東京湾におけるPCBの動態を説明する数値モデルを作成した。数値モデルの計算結果は観測結果をほぼ定量的に再現しており、モデルの考え方とパラメーターの選択の妥当性が示された。このモデルを使い西暦2050年における湾奥から11km地点の堆積物、海水中の懸濁態PCB濃度を計算してみた。その結果は38.5ng/gと82.9pg/Lとなり、現状(36ng/g, 94pg/L)からの大幅な減少は予測されなかった。このことは、対策を講じなければ将来にわたって東京湾の海水、堆積物中のPCB濃度は大きく減少しないことを示唆している。東京湾へのPCBの供給源が河川、河口域の堆積物中に堆積しているPCBであることを考えると、東京湾の海水、堆積物中のPCB濃度の低減のためにはそれらの汚染された堆積物の浚渫が必要である。
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