本研究では、浚渫ヘドロを利用して、沿岸域でヨシを中心とする湿地を創出する技術を確立すること並びに創出したヨシ湿地生態系が有する水質浄化機能及び利用したヘドロの改良機能を評価することを目的とする。これまでヨシの植栽に必要なヨシを大量に供給する技術並びに浚渫ヘドロヘのヨシ植栽及び育成方法に関する検討を行ってきた。 本年度は、一旦創出したヨシ湿地の水質浄化機能を評価するために、(1)浚渫ヘドロを用いて創出したヨシ湿地を対象として、汚濁した自然の感潮河川やそれに一部下水処理水を加えた排水を流入させ、ヨシ湿地から流出する表面流れ方式とした。この流出水中の栄養塩やSS(懸濁物質)濃度を測定して水質浄化機能を評価した。(2)ヨシ湿地の水質浄化機能を強化したヨシフィルター(鉛直浸透流れ)を作成し、水質浄化機能を評価した。 表面流れ系の実験装置での窒素除去能力は、自然のヨシ原や他の植採取法で創出したヨシ原と同程度であった。また、ヨシが十分に育った状態ならば、年間を通じてSSの除去能力が高いことが示唆された。一方、浸透流れ系では、2年以上にわたって、生活排水をヨシフィルターに流入させた。このときの窒素除去率は、年平均で89%と表面流れ系に比べて、非常に高いことがわかっている。そこで、窒素除去に占める脱窒の寄与率を求めるために、実験室規模のヨシフィルターを作成し、生活排水レベルの人工排水を流入させ、窒素除去速度の季節変化を求めると同時に、アセチレン阻害法を適用して、ヨシフィルターから大気への亞酸化窒素のフラックスを求めた。この結果から、少なくとも、窒素除去の27%は脱窒によると推定された。
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