環境ストレスに対する耐性植物の育成は、変わり行く地球環境と人類の生存にとって重要な課題の一つである。重金属の過剰ストレス、とりわけそれが有害な重金属の場合は、即物の生育阻害のみならず、食物連鎖によって人間の健康をも脅かす存在となる。こうした重金属汚染土壌の対策の一つに植物による除染・浄化(Phytoremediation)が考えられるが、それには重金属耐性を有し、その蓄積能が高く且つ、Biomass productionの大きい植物の育成が必要となる。 我々はこれまでにBiomassが大きい植物を宿主植物として、それに重金属耐性を付与することでAccumulator plantを得ることを目的として、酵母由来の重金属結合タンパク質であるmetallothioein(MT)合成遺伝子CUP1をpBI121 Binary Vector Systemを用いてカリフラワーなどいくつかの植物に導入し、その発現を確認した。また、同時にこの形質転換カリフラワーがCdに対して高い耐性能を有することを水耕試験によって明らかにした。そして、この水耕試験の結果を用いて植物によるCdの吸収量を算出し、植物によるCdの土壌よりの収奪量の試算を試みた。その結果、土壌中のCdが20ppmの土壌では、形質転換カリフラワーを2年栽培すると土壌からCdを除去できる計算となった。そこで、Cdとして20mg・Kg-1となるように添加した砂質未熟土および厚層多腐植質黒ボク土に形質転換カリフラワーを移植して120日間栽培し、実際の土壌よりのCd吸収量を測定した。その結果、両土壌とも対照区の非転換カリフラワーは生育が抑制され、特に砂質土壌では顕著であったが、形質転換カリフラワーではいずれの土壌でも正常に生育した。
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