研究概要 |
我々は、フィトクロムの主要な分子種のひとつであるフィトクロムB(phyB)が細胞核に局在することをシロイヌナズナで見いだした(Sakamoto & Nagatani,1996)。さらに、昨年度の研究において、エンドウ芽生えでも同様に単離核でphyBが光依存的に検出されることを示した。そこで本年度は、エンドウ芽生えを用いてphyBの核移行の光生理学的側面について調べた。その結果、1)短時間赤色光照射によっても、連続光処理した場合と同様のphyBの核移行が観察された。また、核phyB量は、照射後約2時間の間はほぼ直線的に増加し、その後はほぼ一定の値を示した。2)短時間赤色光処理の直後に近赤外光照射を行い、phyBの核移行の光可逆性を調べたところ、phyBの核移行そのものは近赤外光では打ち消されなかった。しかし、近赤外光を与えた場合、光処理後約6時間で核phyBは検出されなくなった。3)明所で育てた緑色芽生えを暗所に移すと核phyBの減少が認められる。そこで、暗所に移す直前に近赤外光を照射したところ、核phyB量の減少が促進された。またその時間経過は、短時間赤/近赤外光照射の実験で見られた核phyBの減少のそれとよく似ていた。以上の結果は、生理学的研究から提唱されてきた光安定なフィトクロムの振る舞いとよく一致している。さらに、細胞内でのフィトクロムの挙動を生きたまま観察するため、Green Fluorescent Protein(GFP)とフィトクロムの融合蛋白質を過剰発現する遺伝子導入シロイヌナズナの作出を試みた。シロイヌナズナPHYB遺伝子にsGFP遺伝子をつなぎ、真空浸潤法によりシロイヌナズナphyB遺伝子変異株に導入した。現在、薬剤耐性株のスクリーニングを行っている。また、タマネギの表皮を用い一過的発現を試みたがまだ成功していない。
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