本研究では、共生的窒素固定器官・根粒の発生過程をミュータントの単離とその表現型解析を通して細分化し、各々の過程に関与する宿主因子に光を当てることを目的とする。分子遺伝学的解析に好適な形質を有するミヤコグサLotus japonicusを材料として用い、網羅的なミュータントのスクリーニングから根粒形成に異常をしめす30系統を上回るミュータントを単離することができた。遺伝解析の進んだ系統に関しては根粒の内部形態の光顕・電顕による観察、Nod factor(Lipo‐chitin oligosaccharide)の感受性の解析、根粒特異的遺伝子の発現解析を通して、ミュータントのキャラクタライズを行った。その結果2つの予想外の発見をみるにいたった。紙面の都合上一つの発見を記す。 albl変異体におけるENOD40遺伝子の強い発現抑制 我々はミヤコグサの根粒形成ミュータントを世界ではじめて1997年7月に報告したが、そのうち、根粒菌が細胞内共生状態にまでいたらず、未熟な根粒を着生するミュータントのalbl変異体において、ENOD40の発現が強く抑制されていることがNorthenとin situの発現解析から明るみになった。ENOD40は根粒内の感染細胞域を取り囲む柔組織と根粒内に発達する維管束に顕著にみられたが、albl変異体において根粒内の維管束の発達が強く阻害されていることが見いだされた。これらのことからENOD40の根粒形成における機能として維管束の分化がクローズアップされた。根粒内の維管束は双子葉植物の根に典型的な放射型ではなく外師包囲維管束であるので、このような特殊な維管束構造の形成あるいは機能維持との関連も検討する必要性がでてきた。
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