研究概要 |
本研究では、オリゴヌクレオチドに対する酸化損傷の導入法の開発を行うとともに、これを基質として高等動物由来DNA修復酵素の酵素特性の解析を行った。 1 酵素基質合成 thymine glycol(TG)は、チミンを1ケ所だけ含むオリゴヌクレオチドを過マンガン酸カリウムで酸化することにより導入した。目的とする生成物(19TG)は、逆相HPLC及びゲル濾過により精製した。次に、19TGのアルカリ処理により、ureaを含むオリゴヌクレオチド(19UREA)を調製した。 2 酵素特性の解析 methylpurine DNA glycosylase(hMPG)は、ヒト細胞における主要なアルキル化塩基修復酵素であり、基質特異性も大腸菌のAlkAと多くの部分でオーバーラップしている。hMPGを大腸菌で発現しタンパク質を精製後、アルキル化及び酸化損傷塩基を含むオリゴヌクレオチド基質を用いて基質特異性を検討した。hMPGは、7-methylguanine,ethenoadenine,hypoxanthineを認識したが、同様な条件下で酸化損傷5-formyluracil及び8-oxoguanineは認識しなかった。 最近クローニングされたマウスのendonucleaseIIIホモログ(mNth1)の酵素特性の解析を行った。[^3H]TGを導入したM13DNAとmNth1をインキュベートすると、放射活性がDNAからリリースされ、HPLC分析により遊離のTGであることを確認した。19TG及び19UREAを基質としてmNth1を作用させると、TGおよびureaの3'側でβ脱離した生成物が確認された。以上の結果は、mNth1がendonucleaseIIIと同様に酸化的なピリミジン塩基損傷の修復に関わる酵素であり、同一タンパク質内にN-グリコシラーゼとAPリアーゼ活性をもつことを示している。
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