研究概要 |
Ewing肉腫の発症や癌の浸潤にかかわるetsファミリー転写因子E1AFの構造と機能を解析し、以下の結果を得た。 1.染色体転座t(17;22)(q12;q12)により融合したEWS(Ewing's sarcoma)-E1AFキメラ遺伝子のゲノム構造(2症例)と融合点近傍のgerm line配列を決定し、遺伝子の再構成にAluリピート配列が関わる可能性を示した。 2.ヒトE1AF遺伝子のゲノムDNAを分析し、全長約30Kb、14個のエキソン、約2.3Kbの転写産物をコードする遺伝子構造を明らかにした。また、プロモーター領域の特色を示した。 3.Ewing肉腫から単離した融合癌遺伝子を培養細胞に導入し、Egr-1,c-Fos,gamma-カテニンの誘導や増加を認めた。Egr-1の発現は、Ewing肉腫細胞株への融合癌遺伝子アンチセンス導入により抑制された。 4.E1AF遺伝子のアンチセンス導入によって、口腔癌細胞の浸潤能がin vitro,in vivoにおいて減弱し、I型とIV型コラゲナーゼの発現が低下した。 5.E1AF遺伝子の発現は浸潤能が強いヒト口腔癌や神経芽腫細胞株で高かった。 6.etsファミリーのうち、Pointedサブファミリー(Ets-1とEts-2)がEGFシグナルを媒介でき、コラゲナーゼやウロキナーゼ遺伝子を活性化することを明らかにした。 また、EGFリセプターやErbB2増幅癌の進行にEts-1やEts-2が関わることを示唆した。
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