研究概要 |
1.目的 銅トランスポータであるウィルソン病遺伝子の異常を持つLECラットにおける肝炎後の肝細胞の特徴は、化学発癌過程と同様にoval cellが著明に増生することである。この時期のLECラット肝臓からoval cellを分離・樹立を試みた。さらに、樹立したoval cellを用いて、肝細胞へ最終分化する過程で、この細胞がホメオドメイン蛋白HNF-lα、-3β遺伝子などの肝細胞転写因子の階層的制御により肝細胞へと分化する機構の解明を目的とした。 2.方法と結果 (1)肝細胞の分化過程において、HNF-3β,HNF-3α,HNF-4,HNF-1α遺伝子はこの順で発現することが知られている。肝細胞転写因子のうち、HNF-3βmRNAのみが発現していたが、他の4つの転写因子はいずれも発現していなかった。 (2)我々はすでにHNF-lαのcDNAと抗体を作製しており、肝細胞分化の良いマーカーであることを明らかにしてきた。oval cellにHNF-lαのcDNAを導入した結果、永久株の樹立はできなかった。 (3)このoval cellはin vitro三次元コラーゲンゲル培養系でEGFを添加すると管様構造を形成した。一方、前年度でも報告したように、肝臓に移植したoval cellは肝細胞に分化した。
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