OB-カドヘリンはマウス骨芽細胞よりクローニングされたカドヘリン分子であり、骨芽細胞を含む間葉系の細胞に発現している。その機能の全貌は未だ明らかではないが、骨組織では骨芽細胞で発現が認められるため、、骨形成における細胞間の相互作用、特に骨芽細胞のadherens junctionの形成に関係している可能性がある。ヒトOB-カドヘリンでは、マウスOB-カドヘリンと97%同一な120kDの正常型の他に、細胞間接着能を持たない85kDのバリアント型OB-カドヘリン、正常型の分解産物と考えられる80kDの分泌型の3種類が存在している。正常型は細胞膜上に発現しており、E-カドヘリンと同様にカルシウム依存性の細胞間接着能がみられ、その細胞内領域にはβ-カテニンが結合している。バリアント型OB-カドヘリンは膜貫通部領域に179bpのエクソンが挿入するalternative splicingによって生じる。細胞膜上に発現しているものの、その細胞内領域が全く正常型と異なるためβ-カテニンと結合できず、単独ではカドヘリンに特徴的な細胞間接着を持たない。当初は正常型の機能をドミナントネガティブ機構により阻害すると考えられていたが、バリアント型及び正常型が同時に発現している場合には、バリアント型の細胞間接着能が維持されることが明らかになった。 上記のOB-カドヘリンのIsoform発現について、凍結骨肉腫腫瘍組織を用いて検討を行ったところ、RT-PCR法により23検体でバリアント型及び正常型の発現がみられ、その中の3検体では、バリアント型のみの発現が認められた。さらに、Northern blot法により解析が可能であった8例について検討を行ったところ、転移巣ではOB-カドヘリンの全体の発現は減少しているが、バリアント型の発現は亢進していることが明らかになった。可能であった6例についてWestern blot法による検討を行ったところ、原発巣3例では分泌型がドミナントに発現しており、正常型の発現はわずかであった。転移巣3例ではOB-カドヘリンの発現は原発巣に比較して著しく低下していた。
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