研究概要 |
1。ヒトトポIIαに特異的なモノクロン抗体8D2は病理標本においてKi67抗体と同様に悪性増殖と相関した染色像を示し、また抗癌剤治療の効果やその予後に関するデータも集まりつつあるので、この抗体についてさらに詳細な解析を行なった。この抗体のエピトープはC末端に近いアミノ酸残基1390-1440の間にあり、免疫沈降、FACSによる解析にも有効であったが、トポIIαの活性は阻害しなかった。またトポIIの活性部位近傍にエピトープを持つモノクロン抗体2B5mについては、活性部位(アミノ酸残基805)に対してエピトープはアミノ酸残基825-850の間にあることが示され、今後トポIIの酵素活性への影響を調べる。既にエピトープを決めた他の多数の抗体のデータを加えると、トポII分子のドメイン構造とそこの機能の関係を推測できる。 2。トポIIαとトポIIβの大きな差はC末端領域にあり、この部分は酵素活性そのものには必要とはされないが核移行のシグナルを始めとし、細胞周期に依存してリン酸化される部位が多数存在している。トポIIβに特異的なモノクロン抗体の約40種がこの領域にエピトープを持つので、ここを更に細分化し抗体の分類を行った。抗体の作用は検討中である。 3。このようにして決定した機能領域に当たる部分を、GFP(蛍光発光たんぱく)と融合させて酵母に導入し、その局在を検討した。トポII分子をN末端からおよそ3等分しT,P,Qと名付けると核移行に関してはQ領域のみで必要十分であるが、それにP領域を加えると、細胞周期に依存したGFPの局在が見られた。更にN末端側のT領域を付加するとGFPのシグナルは観察されなくなり、この部分にはトポIIの細胞内での寿命に関する配列があるものと考えられる。これまで誰も培養細胞にトポII遺伝子を導入して発現ができなかったことと対応すると考えられ、更に詳しく解析したところ、原因はN末端から180残基以内にあることが明らかになった。それぞれの領域にはさまざまな相互作用をするたんぱくが存在するはずであり、トポIIカラム、BIACOREなどにより、相手のたんぱくの同定、解析を行うことを目的とし、しかるべき量と純度をもったトポII標本の量産化を試みた。これまで用いてきた発現系では大量に得られたたんぱくがいずれも不溶性であり適さなかったが、プロモーターを変えることにより、いくつかの断片を可溶化した状態で得ることができその作用を調べた。
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