Goosecoid遺伝子はアフリカツメガエルの原口背唇部に発現され、Spemannのオルガナイザーとして働くホメオボックス遺伝子である。この遺伝子はアクチビンにより誘導されることが知られておりdorsalizing(背側化)効果を持つ。我々はアクチビンにより赤血球に分化する赤芽球系細胞F5にgoosecoid遺伝子(gsc)を発現させると分化を抑制することを報告した。本研究では神経堤細胞由来褐色腫PC12にgscを発現させたところNGFによる神経突起伸長を促進することを見出し、血液細胞の分化調節との関係を考察した。 申請者はgoosecoid遺伝子がGSC-PU.1-RBの複合体を形成して細胞の増殖・分化を調節している可能性を示す結果を得ているが、このシステムがホメオ遺伝子-etsファミリー(basic-Helix-Loop-Helix(bHLH)転写因子)-RBファミリーの作用として増殖・分化とがん化にどのように影響を及ぼすのかを検討した。今回は特に、goosecoid遺伝子が神経組織誘導を促進することのメカニズムを血液細胞分化抑制のメカニズムと比較して検討した。 1.GSC(goosecoid蛋白質)はSCLと直接結合しないし、PU.1を介して結合することもない。 2.goosecoid遺伝子は赤芽球の細胞周期に影響を与えないが、神経堤細胞由来褐色腫PC12のS期の細胞の割合を減少させ、増殖を抑制した。NeuroDにはこのような作用は認められなかった。 3.goosecoid遺伝子を強制発現させると、PC12細胞のNGFによる神経突起伸長が促進された。このとき、ニューロフィラメント、MAP1bなどが増加していた。NeuroDではこれらの増加は認められなかった。
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