PNHは白血病を発生しやすく、臨床的に前白血病状態といえる。また、後天性の造血幹細胞変異、正常細胞を凌駕するクローン性増殖、正常造血の抑制など、PNHクローンの特徴は血液がんを彷彿させ増殖異常を示唆する。実際、我々は重症複合免疫不全(SCID)マウスを用いてPNHクローンの内因性増殖異常を検出した。そこで、この異常の詳細を明らかにすることは白血病の発生機構解明にも通じると考えて、PNHクローンの増殖異常の責任遺伝子の同定を目指している。 その一つとしてPNHおよび正常の培養細胞を調整して、両者に発現差を認める遺伝子をDifferential display法にてスクリーニングした。そして発現差を示す遺伝子の3'末端断片構造をまず決め、次に5'RACEを利用して全長cDNAの塩基配列を決定した。塩基配列およびノーザン解析などにより、得られた遺伝子の一つは、PNH細胞にのみ発現する約700bpの遺伝子で、ロイシンジッパーモチーフを有しており転写因子を示唆していた。やはりPNH細胞に高発現する遺伝子を単離したところ、塩基配列はポリミアン代謝関連酵素の一つSpermidine/spermine N1-acetyltransferaseと高いホモロジーを示していた。これらの遺伝子は数症例の末梢血白血球においても培養細胞同様の発現差を呈していた。細胞増殖との関連性に興味が持たれるが詳細は不明である。現在、病的意義を知る目的で、正常細胞およびPNH細胞における遺伝子構造の詳細、発現調節機構、発現亢進による細胞への影響などを調べている。
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