研究概要 |
細胞の増殖は、分化同様、遺伝子発現のプログラムにより制御されていると考えられる。特にG0期から増殖サイクルへの移行に際しては数多くの遺伝子発現が必要であり、「がん」もその遺伝子発現の異常の結果生じてくると考えられる。線維芽細胞を成長因子で刺激すると、immediate early genes(IEGs)と呼ばれる遺伝子群が誘導され、これらが増殖サイクルへの移行に重要であると考えられている。我々は既に脳から多数の新しいIEGsを見いだしており、これらの遺伝子が細胞の増殖・分子に関わっていることを示してきた。中でもrheb(ras homologue enriched in brain)は、ras familyに属する新しい低分子量GTP結合蛋白質をコードし、エフェクター領域がRasやRapのそれとよく似ており、血清で刺激された線維芽細胞でも誘導される。rhebの細胞増殖・分化における役割を明らかにするために、two hybrid systemを用いて相互作用する蛋白質のcDNAをクローニングし、raf-1を見出した。RhebはRafにGTP dependentに結合し、さらに両遺伝子をNIH3T3にco-transfectionすると,fociの形成が促進された。また、PKAでリン酸化されたRafはRhebに特異的に結合し、MEK、MAP kinaseを活性化した。以上の結果から、成長因子とcAMPの二種類の刺激が組み合わさった場合、Rhebが特異的にRafと結合し、その情報を伝えていると考えられた。また、rhebの学生学上の役割を解析するため、ゼブラフィッシュのホモログを単離した。z-rhebのGTP結合領域はよく保存されており、特にG2領域(エフェクター領域)が他の種と完全に一致していることから、種を通して共通の蛋白質間相互作用を介して、情報伝達を行っていると考えられた。
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