がん進展に関わる分子の診断・治療への応用

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09255103
• 研究種目: 重点領域研究
• 研究機関: 札幌医科大学
• 研究代表者: 今井 浩三 札幌医科大学, 医学部, 教授 (60117603)
• 研究分担者: 高橋 雅英 名古屋大学, 医学部, 教授 (40183446) ; 西 信三 北海道大学, 医学部, 教授 (20001894) ; 谷口 直之 大阪大学, 医学部, 教授 (90002188) ; 関谷 剛男 国立がんセンター研究所, 部長 (70142651) ; 湯浅 保仁 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (80111558)
• キーワード: がん進展 / 遺伝子診断 / がん関連遺伝子 / 遺伝子治療

研究概要

癌細胞の接着、増殖、運動、転移等にかかわる分子の中から、重要と思われる遺伝子・分子群に焦点をあてて、癌の進展の機構を明らかにし、診断・治療への応用を展望しようとした。本年度は特に以下の点について研究を進めた。
その際、遺伝性腫瘍症の発癌・癌進展機構の解析が、多くの一般集団の癌の進展機構を明らかにするモデルとして重要と考えられる。また、癌細胞膜上に存在する分子の糖鎖構造とその役割の解明は、癌発生・進展の予知に意義が認められるばかりでなく、癌細胞の制御を図る上でも、興味深い。
本研究においては、以上の観点から癌の進展を総合的に検討し、臨床に直結し得る基礎的な成果を期待する。このような研究は国外においても日進月歩であるが、本研究者らはいずれもその分野における第1人者であり、世界に先がけて臨床に応用し得る成果が得られる可能性がある。
1.MUC1分子の癌進展に及ぼす影響を検討するため、MUC1 cDNAを各種細胞に遺伝子導入し、in vitroおよびin vivoにその効果を観察した。
2.HNPCCの癌と腺腫について、TGF-βRII及びMAD遺伝子をPCR-SSCP法とダイレクトシークエンシングで変異の解析を行った。さらに家族性胃癌の遺伝子解析として癌でRERが高頻度に検出されるので、MMR遺伝子をPCR-SSCP法で検索した。
3.ヒト膵癌を中心として、これに関連する新しい遺伝子を同定した。
4.a1-6フコース転移酵素(a1-6FT)の肝がんにおける発現機構をその発症プロセスを追って、自然肝がん発症ラット(LECラッ卜)などの実験系を用いて遺伝子レベルで明らかにした。
5.AFP産生トランスジェニックマウスを用いて、AFPの免疫抑制機能を明らかにするため、各種自己免疫疾患の発症について、その影響を検討した。
6.ret癌遺伝子によってトランスフォームしたNIH3T3株を用いて、低転移性の細胞株と高転移性の細胞株よりRNAを精製し、Differential Display法にて転移能獲得に伴って発現異常をしめす遺伝子を同定しようとした。

研究成果

• [文献書誌] Adachi,T.,et al.: "Increased sensitivity of gastric cancer cells to NK and LAK cells by antisense suppression of UDP-GalNAc:polypeptide N-acetyl galactosaminyltransferase" J.Immunol.(in press). (1997)
• [文献書誌] Takaoka,A.,et al.: "Suppression of invasive properties of colon cancer cells by a metastasis suppressor KAII gene." Oncogene. (in press). (1997)
• [文献書誌] Takaoka,A.,et al.: "Anti-cell death activity promotes pulmonary metastasis of melanoma cells." Oncogene. 14. 2971-2977 (1997)
• [文献書誌] Yamamoto,H.,et al.: "relation of enhanced secretion of active matrix metalloproteases with spread in human hepatocellular carcinoma." Gastroenterology. 112. 1290-1296 (1997)
• [文献書誌] Takai,S.,et al.: "A human UDP-GalNAc:polypeptide,N-acetylgalactosaminyltransferasetype 1 gene is located at the chromosomal region 18q12.1." Human Genet. 99. 293-294 (1997)
• [文献書誌] Yamamoto,H.,et al.: "Inverse association of cell adhesion regulator messenger RNA expression with metastasis in human colorectal cancer." Cancer Res.56. 3605-3609 (1996)