研究概要 |
IL-12は選択的にTh1細胞を活性化して抗腫瘍効果に関与するほとんど全ての免疫系を活性化する。そこで今回の研究では、IL-12を構成するダイマーp40,P35の遺伝子をIRESをはさんでダンデムに繋ぎ、これを導入した腫瘍細胞をマウスに移植し、腫瘍抗原に反応する免疫系の活性化を腫瘍内から分泌されるIL-12が高めることによって抗腫瘍免疫を付与することを目的とした研究を行った。以前の我々の研究でColon26を用いて治療実験に成功している方法である。EL-4,B16,LMFS(我々が見つけたSaloomaで高頻度に肝転移をおこす)の移植腫瘍株を用いて、上記のIL-12遺伝子を導入した。遺伝子導入B16は移植局所で生育せず、転移も起こさずに治癒した。EL-4は導入遺伝子腫瘍を用いても移植局所で増殖し、治癒しない。また、LMFSは遺伝子の発現量が多ければ、生着できず、中等度では一旦生着増殖後排除され、低発現腫瘍は移植後増殖しその後増殖は止まる。今回の実験で、IL-12の抗腫瘍効果には腫瘍株によって差がみられることが明かになり、LMFSのように産生IL-12の量に応じた効果がみられる腫瘍が見つかったことは、今後IL-12による抗腫瘍免疫機構の解析に有力な道具を入手したことを意味する。研究の最終目的であったIL-12による抗腫瘍T細胞、接着分子の関与の研究はLMFSのような腫瘍を見つけるのに時間をとりすぎ、結論を得るに至らなかった。IL-12の活性を生体内で抑制するモデルを開発する目的で行ったIL-12p40トランスジェニックマウスの開発には成功した。このマウスではIL-12の活性が抑制され、全体としてTh2タイプの反応が優位になっていることも確認した。今後はこれらの道具を活用して初期の目的を果たす。
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