研究概要 |
生薬センソ成分のブファリンは、細胞膜表面に普遍的に存在するNa^+,K^+-ATPaseの阻害を介して、ヒト白血病細胞株に対し分化やアポトーシスを誘導すると考えられている。本研究は、ブファリンの作用がMAKPカスケードを活性化すること、種々のプロトオンコジーンを変動させることなどの知見が、Na^+,K^+-ATPase阻害とどのように関連するかをさらに明確にし、ブファリンをリ-ド化合物とする新たな作用機構をもつ制ガン剤の開発を目的とする。 1)ブファリンによるヒト単球性白血病細胞THP-1の分化誘導過程において、細胞周期変化とCD11bやCD14などの分化マーカー発現を、フローサイトメトリーにより解析した。ブファリンの濃度依存的に細胞はG2/M期で停止した。さらにG2/M期にある細胞で分化マーカー発現が強く認められた。 2)ブファリンはウシ大動脈血管内皮細胞の増殖をG2/M期で停止させ、管空形成を阻害した。 3)HL60細胞のトポイソメラーゼIIはブファリンにより18時間以内に著しく減少した。これに伴い、DNA断片化の経時的な増加が認められた。免疫組織学的検討により、カゼインキナーゼ2はブファリン処置後直ちに核内へ移行することを認めた。この際カゼインキナーゼ2は更に、トポイソメラーゼIIとの複合体を形成することを明らかにした。 4)単独では分化誘導作用を示さない濃度において、ブファリンと他のブファジエノリドとの併用効果を検討した。ブファリンとシノブファギンあるいはレジブフォゲニンとの併用により、細胞毒性を示すことなく選択的に分化を誘導した。
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