研究概要 |
1.ヒトHsp40遺伝子の構造および発現調節機構を明らかにした。転写開始点はATG翻訳開始コドンから47bp上流にあった。プロモーター解析の結果、熱ショックによるHsp40の誘導は、8つの連続した(A/G)GAANモチーフからなる熱ショックエレメント(HSE,heat shock element)に依存することが示された。このHSEに熱ショック転写因子であるHSF(heat shock factor)1が結合することも判明した。なお、第一イントロンにもHSE様の配列が存在しているが、これは熱ショック応答には関与していないことがわかった。このようなことからHsp40は真の熱ショック蛋白質であることが証明された。 2.熱ショック蛋白質(Hsp)の温熱耐性における役割を直接的に証明するためには、特定のHspを条件的に高発現または発現抑制させる実験系が有効である。その1つにTet-on遺伝子発現系がある。まずHeLa細胞にpTet-onプラスミドを導入した。得られたTet-on HeLa細胞に、哺乳動物のDnaJ(Hsp40)相同体のひとつであるHSDJcDNAをpTREヴェクターに組み込んだプラスミドを導入して、doxycycline添加でHSDJを高発現する細胞株を得た。HSDJの発現はdoxycycline濃度依存的であり、約3倍の誘導がみられた。今後このほかに、Hsp70やHsp40についても条件的に高発現または発現抑制する細胞株を単離し、これらの細胞株を用いて各Hspの温熱耐性における役割を解析していく。
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