癌細胞表層における細胞外マトリックス分解制御機構の解析

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09256207
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 清木 元治 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10154634)
• 研究分担者: 伊藤 義文 東京大学, 医科学研究所, 助手 (70292852)
• キーワード: マトリックスメタロプロテアーゼ / 膜型酵素 / がんの浸潤・転移 / MT1-MMP / 細胞外基質分解酵素 / 細胞形態変化

研究概要

膜型マトリックスメタロプロテアーゼ(MT-MMP)は細胞表層で細胞外基質の分解を行い、癌細胞の浸潤を含む様々な機能を制御すると考えられる。今年度の研究で、以下の成果を得た。
1)MT1-MMPの発現は高頻度にヒト腫瘍で見出される。しかし、上皮由来の癌細胞での発現には異論もあった。腎上皮由来のMDCK細胞を用いて、v-srcによる細胞の形質転換に伴ってMT1-MMPの発現が誘導され、同時に細胞はヌードマウスへの移植に際して造腫瘍性、転移性を獲得することが明らかとなった。2)細胞が浸潤する際には、細胞外基質に接着する装置やプロテアーゼが浸潤先端部分に局在して働くと考えられる。細胞表層のMT1-MMPが裏打ちのアクチン繊維と結合することにより局在が制御される可能性を示した。3)現在まで、4種類知られているMT-MMPについて、4番目にスペインより報告された遺伝子が酵素をコードし得ないこと、新たに完全な遺伝子の単離に成功したこと、ヒト癌細胞株ではこれら2種類に相当する転写産物が発現していることなどを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] 清木元治: "Membrane-type matrix metalloproteinase-1(MT1-MTP) gene is overexpressed in highly invasive hepatocellular carcinomas." J.Hepatology. 28. 231-239 (1998)
• [文献書誌] 清木元治: "Cloning of three caenorhabditis elegans genes potentially encoding novel matrix metalloproteinases." Gene. 211. 57-62 (1998)
• [文献書誌] 清木元治: "Transformation of epithelial Madin-Darby canine kidney cells with p60(v-src) induces expression of membrane-type 1 matrix metalloproteinase and invasiveness." Cancer Research. 58. 2240-2244 (1998)
• [文献書誌] 清木元治: "TIMP-2 promotes activation of progelatinase A by membrane-type 1 matrix metalloproteinase immobilized on Agarose Beads." J.Biol.Chem.273. 16098-16103 (1998)
• [文献書誌] 清木元治: "The Ets-1 and Ets-2 Transcription factors activate the promoters for invasion-associated urokinase and collagenase genes in response to epidermal growth factor." Intl.J.Cancer. 77. 128-137 (1998)
• [文献書誌] 清木元治: "Membrane-type 1 MMP(MMP-14) cleaves at three sites in the aggrecan inter globular domain." FEBS Lett.430. 186-190 (1998)