Na^+駆動型モーターのエネルギー変換ユニットあるいはイオンチャネルに対応すると考えられる遺伝子(motX、motY、pomA、pomB)を我々は同定している。H^+駆動型モータータンパク質MotAとMotBとの相同性から、PomAとPomBは複合体を形成してNa^+チャネルとして機能していると考えられた。昨年度は、モーターの阻害剤であるアミロライドおよびその誘導体を利用できる利点を活かして研究を行い、アミロライドの誘導体であるフェナミルに耐性になった2株のモーター変異株を単離解析し、耐性変異が、べん毛モーターのイオンチャネルを形成すると考えられているpomAとpomB遺伝子に各々起こっていることを突き止めた。どちらの変異も、膜貫通部位の細胞質側に存在すると推測されている部位であることが分かった。本年度は、変異pomAとpomB遺伝子を同時に発現させるとフェナミル耐性が増加することを期待して実験を行った。単独の変異では、野生型とほぼ同じ速度で回転するが、野生型で止まる50μMフェナミルでも運動する。2重変異により、フェナミル非存在下でモーター回転が約1/3に低下し、フェナミルを加えても速度低下が起こらなくなった。また、pomAでは変異部分の残基を様々なアミノ酸に置換し、フェナミル耐性との関連を調べ、側鎖の大きさによるPomAの構造変化がフェナミル耐性を引き起こしている可能性が示されていた。pomB遺伝子の変異部位でもアミノ酸置換を行い、PomAと同様な結果が得られた。以上から、特異的阻害剤フェナミルとモーター構成タンパク質との相互作用の解明が大きく進展した。
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