研究概要 |
本研究は、イオシポンプのうちサブユニット組成が単鈍なNa^+/K^+-及びCa-ATPaseに着目し、これらイオンポンプ間の“キメラ ATPase"を用いた分子生物学的、電気生理学的手法、及び原子間力顕微鏡(AFM)を用いた形態学的手法使って、機能ドメイン(特にイオン輸送ドメイン)の同定を目指す。本年度は、以下のことがらを明らかにした。(1)Na^+/K^+-ATPaseの膜貫通領域M1-M10を含んだ疎水性領域とCa^<2+>-ATPaseのATP結合部位を含んだ親水性領域とから構成されたキメラ(NCN)は、Na^+/K^+-ATPase活性を示し、^<86>Rbを内向きに輸送し、また、ポンプ電流も発生する。即ち、イオン輸送機能とその特異性は、M1-M4を含んだN-末端領域とM5-M10を含んだC-末端領域によって決定されると考えられる。その他のキメラATPaseの研究から、特に、M3M4とM5M6領域はATPaseのイオン特異性を決定しており、N-末端の細胞質領域およびM9-COOH領域はイオンによる調節部位を含んでいると考えられる。(2)Na^+,K^+-ATPase(NNN)のカルボキシ末端に細胞膜Ca^<2+>-ATPaseのカルモジュリン結合部位(CBD)を付加したキメラ(NNN-CBD)は、βサブユニットの存在如何に関わらず細胞表面に発現し、[^3H]ウワバインを結合する。しかし、このNNN-CBDキメラがNa^+とK^+を輸送するためにはβサブユニットの存在が不可欠である。このキメラのイオン特異性を更に検討したところ、野生型の3Na^+/2K^+交換輸送能に対して、2Na^+/2K^+であってelectrogenicではなかった。Na^+,K^+-ATPaseのC-末端における修飾がNa^+とK^+のStoichiometryを変えること自体興味深いが・我々は既に、この修飾に用いたカルモジユリン結合部位はNa^+,K^+-ATPaseのFSBA-結合領域と相互作用することも示唆した。
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