研究概要 |
シスチン尿症は、二塩基性アミノ酸輸送システムの先天的な欠損による疾患である。最近、塩基性アミノ酸輸送担体遺伝子(NBAT)の異常がI型シスチン尿症の原因であることが報告された。しかし、NBAT遺伝子より推定される蛋白は、膜貫通領域が1回という特殊な構造をもち、新しいタイプの輸送担体と考えられる。本研究では、このような膜貫通1回の蛋白がどのようにしてアミノ酸輸送担体として機能するのかを調べる目的で、各種欠損rBATを作成し機能解析を行った。ヒトNBATはC-末端に他の蛋白と二量体を形成するロイシンジッパーモチーフを有している。そこで各種C-末端欠損NBAT cRNAを作成し、卵母細胞に注入し機能発現を調べた。その結果、C-末端欠損(Δ511-685)NBATはwild typeの注入時に見られる中性および塩基性アミノ酸輸送システムb0,+に対応する輸送特性を示さず、Naイオン存在下にのみ中性アミノ酸により阻害されるy+システムの促進が観察された。y+輸送システムをコードする遺伝子(CAT-1,2)は、すでにクローニングされており14回の膜貫通域をもつことが知られているが、CAT-1,2とC-末端欠損(Δ511-685)NBATの間にホモロジーは見られない。以上の結果は、C-末端欠損(Δ511-685)NBATはwild type NBATがコードする輸送システムではなく、他の輸送システムを促進することのできる、活性調節蛋白として機能できることが明らかとなった。一方、II型及びIII型シスチン尿症患者ではアミノ酸輸送障害の程度が異なることより、これらの疾患では、NBATと相互作用している蛋白質の異常が推定された。そこで、NBATと相互作用する蛋白質をクローニングするため、酵母two-hybridシステムをもちいて、クローニングを行った。その結果、3種の陽性クローンが得られたが、これらはNBATが発現している腎尿細管および小腸上皮細胞には発現していなかった。よって、酵母two-hybrid法で得られたクローンは非特異的なものと考えられた。次に、ラット腎尿細管刷子縁膜をもちいて、各種重合剤を処理することによりNBATと相互作用する蛋白質の存在を検討した。その結果、約45kDaの蛋白が重合剤存在下にNBATと結合していることが確認された。
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