我々はミトコンドリア内膜に存在するADP/ATP透過担体の機能発現機構に関する研究を行い、これまでにマトリックス側に突出したループが、それぞれゲート、基質結合の主要な部位として機能していることを見いだし、ループの協調的な立体配置の変化により輸送機能が発現するという、Cooperative Swinging Loop Modelを構築した. このモデルに基づき、より詳細な分子レベルでの輸送機能発現機構の解明を目的として、本年度は以下に示す成果を得た. 1.部位特異的プロテアーゼによる切断反応の解析 リジルエンドペプチダーゼによる切断の様式を解析し、輸送に際してループの大きな立体配置変化が起こっていることをより直接的に証明することができた. 2.架橋形成反応の解析 界面活性剤で活性を保持したまま膜から可溶化した担体では、銅オルトフェナンスロリンによる分子間架橋形成は起こらず、第1ループのCys56と第3ループのCys256の間で分子内の架橋形成反応が起こることを明らかにした. 3.スチルベン誘導体の選択的標識反応 この透過担体に対するスチルベン誘導体の反応性を解析し、第1膜貫通セグメント内にあるLys22を選択的に修飾することを初めて明らかにした. 4.組み換えウシ心筋型ADP/ATP透過担体の発現系の確立 酵母の内在性ADP/ATP透過担体の2種類の遺伝子を破壊したのち、ウシ心筋型同透過担体のcDNAを組み込んだプラスミドを導入し、酵母ミトコンドリアに機能を保持したウシ心筋ADP/ATP透過担体を発現させることに成功した.
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