内向き整流カリウムチャネルにおいて膜が脱分極するほど外向き電流が流れにくくなる性質(内向き整流性)は、細胞内の陽イオン性粒子(数種類のポリアミンやMg^<2+>等)とチャネル蛋白との相互作用によって外向きに流れるチャネル電流が抑制(ブロック)されることによる。我々はIRK1(Kir2.1)チャネルをモデルに研究を行い、約1μMのスペルミン(四価ポリアミン)と約500μM〜1mMのプトレッシン(二価アミン)あるいはMg^<2+>の二種類の粒子が細胞内側からチャネルに作用すると、逆転電位付近ではスペルミンによるブロックが起こるのに対して脱分極電位ではプトレッシンあるいはMg^<2+>によるブロックが起きることを示した。そして膜が脱分極電位から再分極する際にはプトレッシンあるいはMg^<2+>ブロックの解放が活動電位の再分極を促進する働きを持つ外向き電流を増加させることを示した。この現象の分子メカニズムを明らかにするためにIRK1(Kir2.1)チャネルの実験からスペルミンブロックの時定数とプトレッシンブロックの時定数をそれぞれ求めてキネテイクスモデルを作製したところ、それぞれの分子との結合部位が一つしかないチヤネル構造では上記の現象は再現されないことが明らかとなった。チャネルにプトレッシンあるいはMg^<2+>が結合する部位が独立に複数個存在する構造を想定することにより電流の膜電位および時間依存性はよく再現された。このようなチャネル構造を実証するための実験を現在行っている。
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