骨格筋において細胞膜の電位依存性L型カルシウムチャネル(ジヒドロピリジン受容体、DHPR)と筋小胞体のリアノジン受容体は興奮収縮連関の中心的機能を果たしている。この2つの分子は蛋白どうしが結合して情報伝達を行っていると考えられているが、その分子機構は明らかになっていない。先に我々は骨格筋型リアノジン受容体(RyR-1)はDHPRと相互に作用しあうが、心筋型リアノジン受容体(RyR-2)はDHPRと相互に作用しないことを見い出した。この実験の目的はRyR-1とRyR-2のこの機能の差に着目し、分子生物学的方法を用いて興奮収縮連関におけるリアノジン受容体とDHPRの相互の活性化機構を明らかにすることである。 実験方法:RyR-1とRyR-2のキメラcDNAを作製し、RyR-1遺伝子を欠くdyspedic mouseの培養骨格筋細胞に発現させた。パッチクランプ法と蛍光カルシウム測定法によりカルシウム電流とカルシウム放出をそれぞれ測定した。 その結果、foot領域にRyR-1のアミノ酸配列を含むキメラR1を発現させた細胞では骨格筋型の興奮収縮連関もカルシウムチャネルの機能もどちらも回復していた。次にキメラのRyR-1の領域をさらに狭めていき、最終的に1635-2636番目のアミノ酸にのみRyR-1の配列を含むキメラR10を発現させた。このR10を発現させた細胞は骨格筋型の興奮収縮連関もカルシウムチャネルの機能もどちらも回復していた。また、RyR-1(2689-3720)のアミノ酸配列を含むキメラR9を発現させた細胞ではカルシウムチャネルの機能の回復のみを認め、骨格筋型の興奮収縮連関の回復は認めなかった。 以上の結果から、L型カルシウムチャネルとリアノジン受容体(RyR-1)との蛋白蛋白相互作用がRyR-1のfoot領域を介して行われることが明らかになった。さらにリアノジン受容体の少なくとも2カ所の異なる部位がこの相互作用に関係することが明らかとなった。
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