本年度の研究は以下の項目に関して研究を遂行した。 1)CD30シグナル伝達系の解析:細胞内機能ドメインの解析を行い、CD30の細胞質内領域のC-末端100アミノ酸が、それぞれ独立してNFkBを活性化し得る3つのサブドメインから構成されていることを明らかにした。これらのうち2つはそれぞれTRAF2およびTRAF5結合ドメインであるが、最もN-端のサブドメインにはTRAF蛋白質が結合しない。現在、この領域に結合するシグナル伝達分子をYeast Two-hybrid法によってスクリーニングを行い、これまでに複数のcDNAクローンを得てその機能を解析中である。 2)CD30シグナル伝達系とHIV発現制御:我々は、CD30のシグナルが、1)HIVLTRの活性化において、NFkB依存的にHIV Tatとsynergisticな協同作用を示すこと、2)C/EBPβ(NF-IL6)によるHIVLTRの活性化をNFkB非依存的に増強すること、3)p38MAPKを活性化することを明らかにし、更に、4)CD30によるC/EBPβ(NF-IL6)の活性化にはp38MAPKが関与していることを明らかにした。これらの結果は、潜伏感染HIVの再活性化において、NF-kBとMAPKを活性化し得るCD30のシグナル伝達系の重要な役割を示唆するものである。今後は、実際にHIVが潜伏感染している細胞株などを用いてCD30からのシグナルによるウイルス遺伝子発現誘導機構を検討する予定である。
|