AIDS(後天性免疫不全症候群)はヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染により引き起こされる。しかし、その病理像としてのCD4T細胞の選択的減少については未だ定説は無い。特に、血中よりウイルス粒子の検出されない無症状期間にもリンパ節及血中においてCD4T細胞のある集団のみが減少することにより、免疫力低下を招き日和見感染症が起こると考えられる、が、その原因は明かではない。著者はNef蛋白質がAIDSの誘因物質であるとの仮説を証明するため本年度の研究を実施した。 Nefレセプターを介したT細胞死をパルスフィールド電気泳動法で検討した。可溶生Nef蛋白でのT細胞障害活性はNef蛋白を抗Nef抗体でcross-linkすることにより、8-10時間内で誘導できた。また、HIVの粒子による細胞障害活性への影響を除く為に用いたHIV-1変異体でのT細胞障害活性も10時間内の短時間で誘導された。これら、細胞死の形態はDNAの断片化、クロマチンの濃縮、細胞膜の膨化などアポトーシスであった。また、細胞周期に依存しておりG2/M期に細胞が集積していることが観察された。また、これら細胞死は抗Nef単クローン抗体、抗Nefレセプター抗体で阻止された(発表論文参照)。
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