昨年までの研究では、tax-4遺伝子のコードする環状ヌクレオチド依存性チャンネルを哺乳類の培養細胞HEK293において発現させ、インサイドアウトパッチクランプ法によって、細胞内環状ヌクレオチドに対する反応性、イオンの透過性などの性質を電気生理学的に解析た。その結果、TAX-4チャンネルは、確かに環状ヌクレオチドに応答して陽イオンを通すことがわかり、機能的に環状ヌクレオチド依存性チャンネルのαサブユニットであることが証明された。また、cGMPに対する応答性が、cAMPに対する応答性よりも約300倍程度高いことなどが明らかになった。今年度の研究では、tax-4変異体と同様の行動異常を示すtax-2変異体の原因遺伝子が環状ヌクレオチド依存性チャンネルのβサブユニットをコードしている事を機能的に証明した。まず、HEK293細胞においてtax-2遺伝子産物を単独で発現させ、インサイドアウトパッチクランプ法によって環状ヌクレオチドに対する応答性を調べたところ、応答を検出できなかった。次に、TAX-4タンパクとTAX-2タンパクをHEK293細胞で共発現させ電気生理学的な性質を調べたところ、TAX-4タンパクを単独で発現させた場合よりも、cGMPとcAMPの両方に対する感受性が下がるという結果が得られた。これらの結果は、tax-2遺伝子が、確かに環状ヌクレオチド依存性チャンネルのβサブユニットをコードすることを示すとともに、TAX-4タンパク(α)はTAX-2(β)とヘテロメリックなチャンネルを作り、機能し得る事を示唆する。共発現によって得られたチャンネルの電気生理学的性質は、従来までに脊椎動物の環状ヌクレオチド依存性チャンネルに関して知られている性質と大きく異なっていた。今後さらに、TAX-4/TAX-2チャンネルの性質を解析する事で、αサブユニットに対するβサブユニットの役割について新しい知見が得られると期待される。
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