研究概要 |
グルタミン酸受容体(GluR)チャネルの基本構造は、3カ所の疎水性領域(M1,M3,M4)で膜を貫通しているものと考えられている。今回、我々は、AMPA選択型及びNMDA型GluRチャネルサブユニットについて、各リガンド(AMPA及びDCKA(グリシン部位アンタゴニストリガンド))結合に関与する領域を更に解析することを目的として、各種欠損変異体及び部位特異的変異体のバキュロウイルスベクター系を構築し、Sf21細胞に感染・発現させた組換型受容体の解析を進めた。各変異体についてWestern解析、免疫細胞化学的解析によってそれらの発現を確認するとともに、リガンド結合活性を検討した。AMPA型GluRα1サブユニットではM1上流のArg-481残基が、また、NMDA型GluRζ1サブユニットではM1上流の約260アミノ酸残基の領域及び、M3-M4間の領域がそれらのリガンド結合活性に必須であることが確認され、水受容体の構造機能相関を考察するとともに更に解析を進めている。 また、エイズ脳症の少なくとも1つの原因としてHIV gP120のNMDA受容体を介した神経細胞死が考えられているが、従来いわれている間接作用とは別にgp120がNMDA受容体グリシン部位に直接作用していることが示唆されはじめている。我々は、バキュロウイルス系で発現したζ1サブユニットへの、グリシン部位アンタゴニストDCKAの強い結合能を既に確認しており、今回、更に、gp120添加によるDCKA結合活性への阻害効果を見出し、gp120がグリシンをmimicできる可能性を含め、詳細に解析しつつある。 一方、神経親和性である単純ヘルペスウイルス1型(Herpes simplex virus 1;ここではHSVと略す)に由来する欠損型非増殖性HSVベクター発現系の一般的な検討を行い、方法論的に改良、発展させることを進め、本系のプロトコールを成書にまとめた(Meth.Mol.Biol.印刷中)。更に、今回、ζ1サブユニットのHSVクローン(HSV/GluRζ1)を構築・解析した。すなわち、HSV/GluRζ1を感染させたRabbit skin cellについて、RT-PCR、ドットブロット及びウェスタンブロット解析により、その高い発現が確認でき、発現したζ1サブユニットタンパク質を分子的、機能的に解析するとともに、εサブユニットと組み合わせてin vivoでの感染実験を計画している。
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