チューブリン合成の促進と微小管の安定化によって大量の微小管が持続的に供給されることが神経突起の発芽と伸展には必須である。また、突起先端における局所的な微小管安定化が、伸長方向の決定に関与することが示されている。しかしながら、その安定化機構については不明な点が多い。本研究では、ビデオ増強微分干渉顕微鏡(VEC-DIC)を用いて、培養神経細胞の突起内微小管の安定性を直接観察するとともに、レーザー光照射によって微小管を切断し、その脱重合過程を解析することによって、突起内における微小管安定化機構の解明を試みた。 [1]培養ラット後根神経節細胞をフロー・セル内にセットし、VEC-DIC観察下に界面活性剤を含む緩衝液を灌流して細胞膜を除去、突起内微小管を露出して直接観察した結果、培養5日以降の成熟突起に限って、外液中で30分以上残存する「安定型微小管」が、全長にわたって存在することがわかった。安定型微小管の大部分は単一で、限られた部位でのみ細胞残留成分や基質と接着していた。 [2]露出した微小管をレーザー光照射によって切断したところ、安定型微小管でも断端より両側に脱重合を開始することから、末端の保護が重要な安定化要因と考えられる。脱重合速度は一端より+端の方が速い。また、安定型微小管では、脱重合速度が遅く、かつ、断続的に進行することが解った。 [3]カ-ヴした微小管を切断するとはじけてまっすぐになること、脱重合中に特定の場所を過ぎると微小管の曲率や方向が急激に変化することなどから、基質上の微小管固定点の存在が明らかになった。 以上の結果は、両端の保護が安定化に重要であることを示すとともに、これまで知られていなかった固定点や脱重合休止点など、微小管上の特異点の存在を明らかにした。今後、これらの特異点の構造や分子構成を調べることにより、微小管制御機構の解明につながるものと期待される。
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