研究概要 |
高分解能NMR測定装置(750MHz NMRに設置)に直結するオンライン加圧セル内で、1-2000気圧の間で圧力を変化させ、プロトンNMRスペクトルの変化を観測した。 (1)蛋白質lysozymeの圧力変性 : hen lysozyme(3.5mM acetate buffer,重水中、pH2.0)で、40-55C、圧力30-2000気圧の範囲で一次元プロトンNMRスペクトルの変化を観測した。ヒスチジンの信号等を対象に天然構造と変性構造の割合を圧力の関数として算出した。この結果、45Cで30気圧で約25%変性していたlysozymeが2000気圧では約50%変性することがわかった。この変性の割合は残基間でおよそ並行して起こっており、圧力変性がほぼ協同的に起こっていると考えられる。一方、天然構造にも加圧に伴う信号の変化が認められ、天然構造そのものが圧力で変化していることが判明した。しかし、変性中間体に相当する信号は観測されず、この点からも圧力変性は分子全体が協同的に起こっていると考えられる。 (2)蛋白質SSIの低温変性構造に対する圧力効果 : 蛋白質Streptomyces subtilisin inhibitor(SSI)はpH3以下の低温(10C以下)で低温変性することが知られている。この変性状態はポリペプチド鎖の約半分が何らかの高次構造をもつ特別のものであるが、2000気圧の加圧によって、この構造がほぼ完全に壊れることがプロトンNMRによって確認された。これはlysozymeの天然構造とは対照的であり、この特別な変性構造が大きな空隙をもつゆるい立体構造を形成していることを示唆している。
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