クラスIIS複合遺伝子座の構造を明らかにするためBrassicaの系統から既知のクラスIIに属するS2、S5、S15とは異なる新奇のゲノミックサザンパターンを示した個体を見出した。この個体はSLGのシークエンや交配実験からパターンは既存のS2テスターラインと異なるもののS2と同定された。さらに、ブロッコリの市販品種に多数見出されるので、今後このタイプのS2をS2ブロッコリタイプと呼ぶこととした。 S2に見られるSLA遺伝子がS2テスターラインに検出されたが、S2ブロッコリタイプには見られなかった。すなわち、S2テスターラインとS2ブロッコリタイプは同じS2であっても、後者はS複合遺伝子座が変異しているものと思われた。 S15ではゲノムDNAから3つのSホモログを単離した。HindIII断片6.2kbのホモログはSRKカイネースドメインのシークエンスを含んでいた。S15-8.0kbはSLG2に対してはDNAで99.0%と非常に高い相同性を示し、3非翻訳領域もSLG2に対してDNAで99.0%と高い相同性を示した。シークエンスの結果からS15の一部はS2由来の可能性が考えられた。S15のS遺伝子座を更に解析するために67個のS15コスミドクローンを解析した結果、2つのSホモログがひとつのクローン内に捕らえられたコスミドクローンがあったのでS15のS-locus上に複数個のS-likeな遺伝子がduplicateして乗っていると考えられる。 SLAの有無、S15遺伝子上へのS2領域の組み換え、S15遺伝子座でのSホモログの重複などから複雑なクラスII S複合遺伝子座の構造の一端が明らかになった。
|