本年度は以下の結果を得た。 1)組換え開始因子の生化学的解析:組換え開始に関与する因子(Mrell、Xrs2、Rad50)の大量発現系を作製し、精製を行った。これらの因子のうち、まずMrellタンパク質の機能を調べた。その結果この因子が二本鎖DNAに対する強い結合能を有すること、また、マンガンイオンの存在下で環状一本鎖DNAを切断するエンドヌクレアーゼ活性を有することを初めて見いだした。この活性はそれぞれ、ホットスポットにおける二重鎖切断の誘導と、切断後の修復に重要な意味を有すると考えられる。 出芽酵母第三染色体のホットスポットのクロマチン構造:これまでに、第三染色体上で最強のホットスポットであるYCR48W領域のクロマチン構造を解析し、その領域のクロマチン構造で減数分裂期に強いDNA受容性の増大が起きることを確認した。また、特異な二重鎖切断パターンを示すGLK1遺伝子座、組換えがほとんど起きないコールド領域にあるPOL4遺伝子座、またコールド領域にあるにもかかわらず例外的に組換えの起きるARS310領域のクロマチン構造の解析に着手した。 3)分裂酵母組換えホットスポット:ホットスポットade6M26遺伝子座における減数分裂期のクロマチン構造変化が、ヘテロ倍数性に依存していること、栄養飢餓ストレスに応答して起きることを明らかにした。また、ホットスポット配列結合因子Mts1・Mts2(CREB/ATF転写因子)のいずれもが、クロマチン構造変化に必要なことを示した。
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