本研究は、細胞内タンパク質の大部分を占める長寿命タンパク質の分解を担うオートファジ-(自食作用)について、その調節に関わる未知のタンパク質群を検索する試みである。本年度の研究計画に基づいて得られた成果は以下の通りである。 A.グルカゴンによりリン酸化されるタンパク質について:自食作用性タンパク質分解を促進するグルカゴン作用に注目し、これがアミノ酸の共存下でのみ再現性が見られることを確かめたあと、自食作用を担う粗リソソーム画分中に標的タンパク質を検索した。^<32>Pラベルによるin vivoリン酸化によりグルカゴンで特異的にリン酸化を受ける数本のタンパク質バンドを検出した。そのうち、特に49kDaのタンパク質(pp49)のリン酸化が再現性が高く、かつ、グルカゴンによるタンパク質分解促進作用と同調したことから、標的タンパク質である可能性が高い。現在、この単離・精製を目指して粗リソソーム画分からミトコンドリアを除去し、自食胞・リソソーム画分での存在を確かめ、PorosR1/Hクロマトグラフィーでの精製を試みている。 B.自食作用成熟段階に関わるGTP結合タンパク質について:本計画では細菌毒素ストレプトリジンO(SLO)を用いた膜透過性細胞が自食作用成熟段階を保持していることを利用して、この段階に関わる調節タンパク質を検索するものであるが、サイトゾル中の20-30kDaの低分子量GTPaseがこの成熟段階に関わる候補としてあがってきた。けれどもこの段階でバイオアッセイに用いるSLO標品に問題が出てきた。現在、標品毎の膜透過処理特性を、他の試薬(pore-forming agents)の活用の可能性も含めて再検討している。
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