アポトーシスが起きる際には、細胞の縮小と断片化、核の凝縮、DNAの断片化などの変化が短時間内に進行する。アポトーシスの実行には、線虫C.elegansの遺伝学的解析から同定された細胞死実行遺伝子産物CED-3の哺乳動物ホモローグであるcaspasesが重要な役割を担っていることが明らかにされつつある。Caspasesはこれまでに少なくとも10種類報告されており、その中でもcaspase-3(CPP32)とcaspase-4(TX)がFas誘導性アポトーシスに関与することを明らかにし、さらにcaspase-4(TX)からcaspase-3(CPP32)へのカスケードが存在することを明らかにした。また、Caspasesの基質蛋白質については幾つか同定されているが、未だ不明な点が多いため、未知の基質蛋白質を同定するための方法を確立した。本法はyeast two-hybrid systemに改良を加えたものであり、具体的にはcaspase-1(ICE)の2つのサブユニットを別々のプロモーター制御下において発現させ、小サブユニットをLexA DNA結合領域と融合させた。さらにyeast内での酵素一基質複合体の安定性を確保するために、基質蛋白質が分解されないように酵素の活性中心に点突然変異を導入した。以上のbaitプラスミドがyeast内で機能することをGal4転写活性化領域とICE結合能を有するCrmA蛋白質を融合したプラスミドを用いて確認した。同様なbaitプラスミドをcaspase-3(CPP32)についても作製し、ヒト胸腺及びマウス胎児ライブラリーをスクリーニングすることにより、複数のクローンを得ることに成功し、幾つかのクローン由来蛋白質がin vitroで活性型caspasesによりアスパラギン酸のC末端側で切断されることを確認した。今後は、すでにクローニングしたcaspaseの基質蛋白質の解析を通してアポトーシスの分子機構の解明を目指していく予定である。
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