研究概要 |
人は繰り返し運動することにより徐々に上達できる運動学習の能力を有している.この観点から,内部モデルを学習ことによりこの運動学習を説明する学習制御モデルが提案されてきた.しかし,これらの学習制御モデルでは学習語には獲得した内部モデルを用いたフィードフォワード制御により正確な運動が可能となるが,学習初期にはほとんど制御できていないという問題点がある.一方,人の運動系は、筋や反射系により実現されている可変粘弾性特性を有している。この可変粘弾性特性を利用することにより、運動の習熟度に応じて運動戦略を適応的に変化させることが可能である。例えば、運動目標を達成しやすくなるために、学習初期に粘弾性を高くすることにより運動精度を高めることができる。しかし、高すぎる粘弾性はエネルギー収支や疲労の点から不利である。このような観点から、本研究では、学習が進むにつれて粘弾性を徐々に下げてゆくことにより、学習後には相対的な小さい粘弾性で高精度な運動が可能となる学習制御モデルを提案した.この学習制御モデルの有効生を計算機シミュレーションにより確認した.本研究で提案した学習制御モデルは,運動学習過程において有効な戦略の1つを説明している可能性があり,生理学的観点からも可能なモデルとなっている.今後,人腕の運動計測により本提案モデルの妥当性を検証する予定である.
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