テロメアは線状染色体の末端を構成するDNA・タンパク質複合体であり、その正常な機能の維持が染色体機能にとって必須であることが明らかになっている。我々は分裂酵母を材料に、テロメアDNA機能構造の維持機構の分子レベルでの解析を行っている。 まず、細胞内でのDNA損傷への応答に関与するチェックポイント遺伝子のうち、実際にDNAを直接監視するディテクター分子であるrad1^+、rad17^+、そのシグナルを下流に伝えるトランスミッターとして機能するrad3^+がテロメア長の維持に関わっていることを示した。rad3^+によるシグナルは最終的にはCdc2の活性を抑制し、細胞周期の停止を導く。しかし、rad3などの変異株で見られるテロメア長の異常は細胞周期の停止によっては抑圧されない。このことからテロメア維持には細胞周期以外のrad3^+の標的因子が関わっていることが明らかになった。 rad3^+はヒト常染色体性劣性の遺伝病ATの原因遺伝子ATMと相同性を持ち、プロテインキナーゼ活性を有することが示されている。我々は分裂酵母において第二のATM相同遺伝子tel1^+をすでに同定している。tel1^+、rad3^+はテロメア長の維持においては機能の重複が見られ、二重変異株においてテロメアの極端な短小化が観察される。両者の単独変異株においては、反復配列の安定性の低下が観察されるが、その標的反復配列の特異性が異なることを見出した。これらの結果は複数のATM相同遺伝子が独立に染色体の安定性の維持に関与していることを示している。現在、rad3^+の持つ多面的な機能の解析をめざし、複数の特異的アレルの単離を進めている。
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