XPA(色素性乾皮症A群)蛋白質は273個のアミノ酸からなる分子量約31kの蛋白質で、N末端から105-129残基付近にZnフィンガーあるいはZnクラスターをとりうるCysクラスター領域を持つ。また、大腸菌で発現された組み換え体XPA蛋白質は、UV-damagedDNAに対する特異的結合能を持つことなどが明らかにされている。本研究ではヒトXPAの中央ドメインの溶液中での立体構造を決定し、損傷DNA、及びRPA70との結合部位を同定することを目的とする。 ヒトXPA中央ドメインの溶液中での立体構造を高精度で決定することができた。中央ドメインの立体構造はN末側のZn-fingerドメインとC末端側ドメインの2つのサブドメインからなり、両者は8アミノ酸のリンカーに繋がれている。2つのサブドメインは構造上独立しておらず、両者間に疎水性相互作用が見られた。 Zn-fingerサブドメインはGATA-1やステロイドホルモンレセプターなどのDNA結合タンパク質に見られるZn-fingerと同様のZn配位や局所構造をもつ。しかし、2次構造や全体のフォールディングは構造が既知のZnフィンガー構造とは異なり、新規の立体構造を持つ事が判明した。 複合体のスペクトル解析によって、XPAのDNA結合部位はC末端側ドメインのもつ塩基性クレフト部分であることが判明した。また修復因子としても機能するRPAの持つ一本鎖DNA結合ドメインとの複合体のスペクトル解析によって、XPAのZnフィンガー部分がRPA70との結合部位と同定された。これはZnフィンガー構造がタンパク質結合ドメインとして機能する事を示す最初の直接的な構造学データであると思われる。
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