研究概要 |
本研究では、生化学的解析に十分耐えうるネズミマラリア原虫(Plasmodium berghei赤内型)ミトコンドリアの調製法を確立し、その重要な機能の一つである呼吸鎖電子伝達系の生理的意義と宿主ミトコンドリアとの相違点を明らかにすることを目的としている。 本年度はその具体的課題として、従来とは原理の異なる細胞砕壊装置を用いてミトコンドリア分画法を検討したところ、これまで酵素組織化学的染色法では検出されていなかったコハク酸酸化活性を保持したミトコンドリア分画を得ることに成功した。とくにN_2 cavitation法によるミトコンドリア分画は、Physcotron法とくらべてコハク酸酸化酵素の比活性が高く、また、電顕形態学的にもよりintactな構造をもつオルガネラが含まれることが明らかになった。さらに、本分画にはジヒドロオロテート脱水素酵素(DHODase)活性が存在し、その比活性(3.06nmole/min/mg protein)は同時に測定した宿主マウス肝ミトコンドリアと比較して約6倍の値を示した。本分画のコハク酸酸化系は、宿主哺乳類の呼吸鎖阻害剤であるTTFA,シアンに対して同様の感受性を示した。しかしながら、本酸化系を構成する各電子伝達酵素の活性比は、宿主ミトコンドリアと著しく異なっており、上述した高いDHODase活性とあわせて、ネズミマラリア原虫赤内型の特異性が明らかになった。 今後はさらに純度の高いミトコンドリアの分画法、抗マラリア剤の呼吸鎖におよぼす影響の検討を行うとともに、マラリア原虫に特異的な電子伝達活性の検索をを行う予定である。
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