研究課題/領域番号 |
09270229
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研究機関 | (財)大阪バイオサイエンス研究所 |
研究代表者 |
裏出 良博 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 副部長 (10201360)
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研究分担者 |
KUBATA K.B. (財)大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 研究員 (30291032)
堀井 俊宏 大阪大学, 微生物研究所, 助教授 (80142305)
早石 修 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部・所長, 部長 (40025507)
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キーワード | マラリア / プロスタグランジン / 発熱 / 免疫抑制 / 昏睡 / ELISA / アラキドン酸カスケード / GC-MS |
研究概要 |
Plasmodium falciparum感染赤血球におけるプロスタグランジン(PG)の産生に関する実験を行い、以下の知見を得た。1)P.falciparum感染赤血球ホモジネートを過剰量(1mM)のアラキドン酸と反応させると、PGD2・PGE2・PGF2αが産生される。2)そのPG産生は非感染赤血球ホモジネートでは認められないが、単離したP.falciparumのホモジネートで再現される。3)そのPG産生はアラキドン酸を加えないと起こらない。4)P.falciparum感染赤血球を33μMアラキドン酸の存在下に2日間培養すると、原虫ホモジネートでのPG産生は数倍に増加する。5)原虫ホモジネートでのPG産生は熱安定性を示し、哺乳類シクロオキシゲナーゼを完全に阻害する3μMアスピリンおよび40μMインドメタシンにより影響されない。6)感染赤血球の培養液中にPGが分泌され、その分泌は赤血球単独の培養では起こらない。7)感染赤血球の培養液へのPGの分泌量は培養液への33μMアラキドン酸添加により10倍程度に増加する。8)FCR株を用いた同調培養系では、培養液中へのPG放出はトロフォゾイト/シゾント期に最も活発である。以上の結果は、P.falciparumが人間と薬剤感受性の異なるシクロオキシゲナーゼ様の酵素を持ち、アラキドン酸からPGを合成する能力を持つことを示している。PGD2は内因性睡眠物質であり抹消血管の拡張作用を示す。一方、PGE2はヒトの内因性発熱物質であり強力な免疫抑制作用を示す。従って、P.falciparumがこれらのPGを利用して宿主の免疫反応を回避し、P.falciparum由来のPGがマラリアの間欠性発熱や脳マラリアの昏睡の一因である可能性が考えられる。
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