T細胞の活性化はT細胞受容体からの信号と接着分子からの補助信号が必須である。我々は補助信号分子としてCD28/CTLA4を研究してきた。CD28/CTLA4は共通のリガンドであるB7-1/B7-2を持つ、T細胞上の分子である。CD28は静止期のT細胞から発現していて活性化のための副信号を伝達する。一方、CTLA4は活性化T細胞に発現誘導され、T細胞の不活性化を誘導する。本研究では新たに発見したB細胞上のCTLA4結合分子ACBMの機能解析とcDNAの単離を目的としている。新しいCTLA4結合蛋白を同定するために既知のリガンド、B7-1/B7-2と結合できない可溶性変異型CTLA4の作製を行った。この分子を用いて細胞株を検索し、結合できる細胞が新しいCTLA4結合蛋白を発現していると考えた。CD28/CTLA4の細胞外領域には動物間で高度に保存されたMYPPPYモチーフが存在したのでこのMYPPPYモチーフに点突然変異を加えていった。その結果、最後のPYをAに置換したPYAA変異体がB7-1/B7-2と結合できなかった。このPYAA分子の細胞外領域をIgG1のFc領域と結合させたPYAAIgGを作製し、細胞株を検索してマウス未熟B細胞株、WEHI231細胞に結合を認めた。WEHI231からACBM分子を免疫沈降すると130kDのホモダイマーであることが判明した。ACBMのcDNAを単離するためにCTLA4IgG/PYAAIgGを用いたアフィニティーカラムを作製した。しかし、CTLA4IgG/PYAAIgGの単体への共有結合後、ACBMとの結合が弱まり、目的よりかなり少量のACBMを精製できたのみであった。そのため、精製を続けるためには大量のCTLA4IgG/PYAAIgG分子が必要となり、アデノウイルスを用いた発現系を作製した。この発現系を用いてmgオーダーのCTLA4IgG/PYAAIgGを得ることが可能となり、ACBMの精製とあわせて、CD28/CTLA4-B7/ACBM信号の生体内での機能解析が可能となった。
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