インターロイキン2(IL-2)はT細胞の増殖をはじめとして、免疫系の制御に中心的役割を果たすサイトカインである。IL-2の作用は、標的細胞膜上に存在するIL-2受容体を介し発揮される。IL-2受容体は、α鎖、β鎖およびγ鎖から構成されることが明らかとなっているが、IL-2シグナルがIL-2受容体から核内へと伝達され、細胞増殖を制御する機構に関しては不明な点が多い。我々は、これまでにIL-2による細胞増殖シグナル伝達経路には、IL-2受容体からsrc型チロシンキナーゼ1ckを介するc-fos/c-jun遺伝子の転写誘導、c-mycおよびbcl-2遺伝子の転写誘導に至る、少なくとも3つの経路が存在することを明らかにしてきた。最近、我々は、mitogen-activated protein(MAP)kinase系およびc-jun amino-terminalkinase(JNK)系のシグナル伝達への関与が示唆されている非受容体型チロシンキナーゼprolinerich tyrosine kinase2(Pyk2)のIL-2シグナル伝達における役割の検討を行ったところ、ヒト末梢血リンパ球(PBL)において、IL-2刺激によりこのチロシンキナーゼPyk2が活性化されることを見い出した。そこでIL-2に応答して増殖するマウスプロB細胞BAF-B03由来の細胞株に、Pyk2およびキナーゼ活性を欠失した変異型Pyk2を発現させ、IL-2に応答した細胞増殖の誘導が影響を受けるか否かを検討した。その結果、変異型Pyk2を発現させた場合、IL-2による細胞増殖が阻害されることが確認された。我々は、以前、他のタイプのチロシンキナーゼJanus family protein tyrosine kinase(Jak)1およびJak3がIL-2のシグナル伝達経路に関与しており、Jak3はIL-2による細胞増殖の誘導に重要であることを示した。しかしながら、Jak3の下流のシグナル伝達分子であるstat5は細胞増殖シグナルに必須ではなく、下流のシグナル伝達分子については不明であった。そこで今回、Pyk2がJak3の下流のシグナル伝達経路において機能しているか否かを検討したところ、Jak3の細胞増殖シグナル伝達にPyk2が重要な役割を担っていることが明らかとなった。
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